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昨日ゆずにゃさんとミツワタさんがOZアバターを作るとしたらとかそんなもしも話に花を咲かせていたんですが、その時に書いたサマウォのお話を日記の続きの所にあげれば良いと教えてもらいました。
でも腐女子向けじゃないしなぁ、と思い悩んでいたんですが一晩たったらまぁいいか、に変わったのであげようと思います(笑)
というわけで、栄おばあちゃんとおじいちゃんのお話。時間軸は侘助を引き取るちょっと前、です。
短いよ!

誤字と変換ミスは私のクオリティ(ぇ



 なんて暑い、日。何処までも青い空を見上げれば、遠くに厚くふくれた雲の垣根。直視することすら出来ない光の塊が鮮やかに茂る緑に遮られ、それでも目映く視界に映った。ああ、なんて暑い日。癖のある長い髪を後ろで一つに結い上げて纏め、何度となく心で呟く言葉とは裏腹に、笑みを刻んだ。
 少しばかり目尻のしわが目だつが意志の強い瞳を持つ女性は美人、というよりも凛々しく。華々しい鮮やかな色彩ではなく、どこか涼し気な、薄い藤の反物から自ら仕立てた着物を纏い、彼女は待っていた。遠く、畦道をゆっくりと歩いて来る人影が近くへと訪れるのを。
 あちらも早々に気がついていたのだろう。それでもその歩調は変わる事がない。
 仕方がないねぇ、とその人影に胸中でそっと呟く。やはり言葉とは裏腹に、愛おしそうに。

 近づいて来るその背が、哀し気に丸まっていることに気がつくまでは。

 ゆっくりと、ゆっくりと歩み寄る小さな影が、だんだんと大きくなっていく。その顔も、暗く。
 少し駆け寄ればすぐに触れられる距離で立ち止まると、壮年に入りながらも凛々しい面の相手は気弱な顔で微笑った。ああ、なんてこの人らしくない。それだけで彼女は全てを悟った。
「・・・大の大人が泣くのを堪えるんじゃないよ」
 泣くのを我慢しろ、とは言わなかった。泣きたい時は泣けば良い。それが少なからず情を抱いた相手との今生の別れならばなおさら。
「・・・・・・ありがとう」
 それでも、気弱く笑う。涙は溢れない。昔はそれこそぴいぴい泣いていたくせに、と彼女も微笑った。哀しそうに。
 寄り添うために、開いた距離を縮めた。眩しく、暑いはずの日差しが暑いと感じられなかった。
 抱きしめ合うでもなく、唯寄り添いあう。それだけで、十分だった。

「・・・残された子が、いるんだ」
「ああ、いいよ」
 しばらくしてぽつりと呟かれた言葉に、躊躇う事無く答えれば奇妙な顔で見つめ返された。それに思わず相好を崩してしまう。
「馬鹿だねぇ。アンタの子だ。アンタが惚れた相手の子だ。何にも不満はないよ」
 可愛いだろうねぇ、本心から笑う。子供は好きだ。血の繋がりがあろうと、なかろうと。それに愛しい男の血が流れているのなら、余計に愛おしい。
「お前は本当に・・・・・・日本一の、女だ」
「褒めても何も出やしないよ」
 ゆっくりと踵を返し、二人並んで歩く。男を先に、女を後に。
「その子の名前は、なんて言うんだい」
 畦道は、二人の下駄の音を吸い、風の音を、葉の音を、川の音を、虫の声を、・・・遠くの子供達の声を、響かせる。もう少し進めば、朝方に咲き誇る夏の花の群生が。

 ああ、暑い。けれど、夏は好きだ。そして夏に訪れる新しい子供も、きっと好きになれる。不思議と確信しながら彼女は口元を綻ばせ、その子供の名前を待った。

「・・・侘助、だ」









 本当に、本当に。

 あの夏の日に。お前を迎えられたことが。



 嬉しくて、嬉しくて。仕方がなかったんだよ。
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